水上悟志さんの短編作品集。
出来れば「げこげこ」を読んでからこちらを読んでいただきたい。
水上悟志さんの作品は、設定が奇抜なものが多いのですが、
人間ドラマとしての完成度はとても高く、
どの作品からも心に何かを残してくれます。
かといって説教臭いという事も無く、
エンタテインメントとしても一流品でして、
友達などに「お勧めの本は?」と聞かれた際には
必ず候補に挙げている位、好きな作家さんなのです。
まずは表題作『ぴよぴよ』でガッツリ心を掴まれます。
前回の短編集の表題作「げこげこ」も、
男が突然蛙になってしまうなど突拍子もない作品でしたが、
こちらもこちらで負けていません。
神社で「にわとりにならないひよこ」を買ってきた所、
本当ににわとりにならなかった上に、
そのままの姿で人間大ほどまで大きさまで成長。
しかも源八朗さん(ひよこの名前)、
家事までこなしちゃうんですよ……
ひよこの姿で三角巾を頭に被り、掃除機を使っている姿が
あまりにもシュールすぎて、この時点で敗北決定。
授業参観に来たり、泥棒を撃退したり、もう訳分かりません。
でも最後には家族愛を描いていて、ちょっとホロリとさせるような
良い話に仕上がっているから気が抜けません。
(何の気かはさておき)
兜と仮面を常に着用している女の子から告白されてしまった
碓氷くんのお話「魔界斬妖剣・ドキドキ地獄変」。
心の中に住む妖精「がんばってちゃん」と妖怪「やめよーぜ」による
水島君の心の葛藤を描いた「がんばってちゃんとやめよーぜ」。
先に亡くなった慕われていた後輩に、2月14日を何度も
やり直しさせられる立会川君を描いた「えらぶみち」
そして前回の短編集「げこげこ」からの続き物、
拝み屋・夜明(ひので)さんの活躍?を描く百鬼町シリーズが2作収録。
短編集ならではのバラエティに富んだ収録作品から、
水上悟志さんの実力を知る事が出来る作品集になっていますよ。
なかなか見かけないかもしれませんが、ぜひご一読を。
少年画報社
水上 悟志(著)
発売日:2007-01-26
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ランキング:941
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